彼が来た時、みんなが騒いでいた。俺は誰だか良くわからなかった。風呂もみんなと別にされていた。風呂でみんなに聞いたら「〇の旦那だよ」と言われ、驚いた。
しばらくして、俺の独房に来た。留置所も俺なら一緒にしても大丈夫と思ったのだろう。俺も根掘り葉掘り聞くようなことはしなかった。手紙を見せてくれたり、自分から話してくれたりした。余計に、こっちから聞いちゃ悪いよなと思った。
ちょっとズボラなところがある人だった。覚醒剤で何度か捕まって、ムショにも行っていたようだ。前は1年くらいだったらしい。初犯は執行猶予になるらしい。また、量刑は所持していた量が多ければ、重くなるとのことだ。
売人は最低1日4万くらい稼げるが、かならず捕まると言っていた。自分のことは話すが、こっちの質問にはあまり答えてくれなかった。求刑が3年で、執行猶予と言われているが、こんな詐欺事件なんだと説明したら、しばらく考えて「2年くらい、くらうかもしれませんね」と言った。ちょっと意外だったし、経験者にそう言われると、がっかりした。
そういえば、検査停電の時、一時的にヤクザ二人が俺の房に来た。そして「求刑3年は微妙だなぁ」と言っていた。この言葉にもがっかりした。だって、プロがそう言うのだから。
そうこうしているうちに、同室のアイドル旦那は、忘れもしない12月2日に東京拘置所に移送になった。確か2月が第一回期日だった記憶がある。普通はこんなタイミングで移送になるが、俺がまだ留置所にいるのは、無呼吸症候群でシーバップを使っているからだろうと留置係が言っていた。
